暮らシフト研究所の「自然農」について
肥料・農薬を必要としない(無施肥無農薬)
化学肥料(栄養サプリメント)や有機肥料(栄養たっぷりの豪華な食事)に恵まれすぎて育った、いわばメタボ体質の作物は、見た目は発育が良くて立派でも、「自己免疫力」が弱いため、病原菌や害虫に狙われやすく、健康維持のためにどうしても「薬」に頼らざるを得ないという悪循環に陥りがちです。一方、自然界に限りなく近い自然農の田畑で、必死に根を伸ばしてわずかな栄養(粗食)を吸収して育った、いわば「野生児」のような作物は、見た目は小柄で頼りなくても、その体は丈夫でたくましく、病気や虫を簡単には寄せ付けません(ただし、あまりにも栄養不足で飢餓状態が続けば、栄養失調で不健康になります)。
草や虫を敵にしない(生物多様性)
一般的な農業では、害虫や雑草は作物の「敵」であり、何とか排除しようと必死になりますが、自然農の考え方では、むしろ作物の健康な生育を手助けしてくれる頼もしい「味方」です。畑の表土を雑草が覆ってくれていれば、少々雨が降らなくても、土が乾くことはありません。雑草の丈夫な根は、固い土にも食い込んで、水と空気を運び、土中環境を改善してくれます。伸びすぎて作物の光合成を邪魔する草は、抜かずに適度な高さで「散髪」し、切った葉を作物の根本に置くことで、雑草の伸び過ぎを抑え、将来の土の栄養になります。また、害虫は益虫の餌です。自然農の田んぼにはクモなどの益虫がたくさんいるので、害虫が増えすぎることはなく、多様な生態系が自ずからバランスを整えてくれているのです。
ビオトープ(生き物のすみか)田んぼ
通常の田んぼでは、生産性を高めるため、冬の間は水を抜いて土を乾燥させます。稲の生育中も「中干し」や「稲刈り」の時期は水を抜きます。しかし、不耕起&無肥料の暮らシフト研究所の田んぼでは、年間を通じて水を切らさないようにしています。生物多様性に富んだ「湿地」の環境に近づけるためです。その結果、カエルやイモリなどの両生類、ヘイケボタルやコオイムシなどの水生昆虫、イシガメ、カルガモなどなど、実にいろいろな生き物がたくさん集まってきて、年々にぎやかになってきています。こうした生き物たちに囲まれての農作業は、発見と癒やしの連続で、「楽しい」のひと言に尽きます。
自然をつぶさに観察し、自然から学ぶ
自然界の生態系のミクロな営みを注意深く観察していると、ヒトの体内のしくみや、人間社会のしくみと驚くほど類似している点が多いことに気が付きます。できる限り人工物を加えず、作物をやさしく見守りながら、ありのままの生長過程やさまざまな動植物が相互に関わり合う様子をつぶさに観察し続けることで、健康を維持回復するための秘訣や、人間社会が抱えるさまざまな課題解決のヒントを得ることができるのです。
耕さない(不耕起)
自然界の野原や森では、落ち葉や枯れ草が積もり、ゆっくり分解されて、人が耕さなくてもフカフカで適度に養分が蓄えられた土ができ、そこで草木がちゃんと元気に育っています。暮らシフト研究所の自然農の田んぼや畑でも、自然界に倣って耕うんや代掻きをせず、そこで育った雑草を刈って置いたり、収穫した稲わらや米ぬかなどを戻したり、周囲の里山や川辺の落ち葉やヨシを積み重ねたりするだけで、あとは、そこに集まる微生物たちに土づくりを任せています。